こんにちは。「わたるの介護相談室」を運営しているわたるです。
今回のテーマは、高齢者施設と障がい者施設の働き方や現場の状況ってどう違うの?
ただ、実際には入所施設ばかりではないので「高齢者施設」と「障がい者施設」の違いをひとくくりで考えるより、「高齢者介護」「障がい者介護」という制度やサービス全般で考えていきたいと思います。
施設形態やサービス形態の違いに関する詳細記事は別記事で紹介したいと思います。
この記事では、「高齢者介護」と「障がい者介護」全般に関して・・・
- 介助量の違い
- 夜勤負担の違い
- 精神的負担の違い
- 給料、キャリアの違い
- 人間関係における違い
について解説していきたいと思います。
すでに介護の仕事をされている方、今後転職を考えている方の参考になれば幸いです。それでは順番に見ていきましょう!
1.高齢者介護と障がい者介護の違い
まずは全体像からです。
高齢者介護は「身体介助中心」。
障がい者介護は「生活支援・行動支援中心」。
という傾向にあります。
なぜこのような傾向にあるかというと、
からです。もちろん障がい者介護に身体介護が全くないというわけではありませんし、障がい者入所施設では身体介助が多くあるのも事実です。
あくまで全体像でのお話と捉えてください。
では、ここからは具体的に見ていきましょう。
2. 介助量の違い
2-1.高齢者介護
特別養護老人ホームや老健などでは、排泄・入浴・食事介助が日常業務の中心です。
寝たきりの方、全介助の方も多く、身体的負担はかなり大きいのが現実です。
グループホームにしても、「1対1で寄り添える環境」というイメージがあるかもしれませんが、実際は身体介護を含めた業務に追われていることが多いです。
有料老人ホームに関しても同じことが言えます。
2-2.障がい者介護
障がい者介護は、事業形態によって大きく異なります。
生活介護や入所施設では身体介助もありますが、グループホームなどでは見守り中心のことも多いです。
就労支援事業所に関しても身体介助よりも精神面のフォローや、生活支援、コミュニケーションの支援が中心になることがほとんどです。
総評すると、体力面の負担は高齢者施設より軽い傾向にあります。
👉 結論:体力面で考えるなら、高齢者施設の方がハードになりやすい。
3. 夜勤負担の違い
3-1.高齢者施設の夜勤
- 定時の巡回
- コール対応
- センサー対応
- 排泄介助
- 急変対応
ほぼ休めません。
特にユニット型の特別養護老人ホームでは、20人のご入居者(2ユニット)を1人で対応することがほとんどなので、夜勤中ずっと動き回っているなんてことも珍しくないです。
3-2.障がい者施設の夜勤
高齢者施設の夜勤に比べると圧倒的に業務量が少ないのが特徴です。ただ、入所施設に関しては、障がい者施設の中でも業務量や介助量が多くなる傾向にあります。
また、障がい者施設のほうが、突発的な行動をとられるご利用者がいるという特徴があります。
のちほど解説しますが、業務量の違いも含めて夜勤手当は高齢者施設のほうが高い傾向にあります。
👉 結論:
身体的にきつくなりやすいのは高齢者施設。
高齢者施設に比べると業務量が少ないが、突発的な行動をとられる利用者もいるのが障がい者施設。
4.給料・処遇の違い
給料面は多くの人が気になるポイントかと思いますので、具体的なデータも取り入れながら説明していきたいと思います。
4-1. 給与比較表
※ 現在公表されているデータでは最新版。令和6年9月時点・常勤
厚生労働省の「令和6年度 介護従事者処遇状況等調査」 および「令和6年度 障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査」 の結果に基づいています。
| 比較項目 | 高齢者介護 (介護職員) | 障がい者介護 (福祉・介護職員) | 差額・特徴 |
| 平均月給 (総額) | 338,200円 | 327,720円 | 高齢者が約1万円高い |
| 前年比の伸び額 | +13,960円 | +19,970円 | 障がい者の方が伸び率大 |
| 介護福祉士 (資格有) | 350,050円 | 356,460円 | 資格保有者は障がい者が高い |
| 社会福祉士 (資格有) | 397,620円 | 382,370円 | 高齢者分野の専門職が高い |
注釈: 平均給与額には、基本給のほか、諸手当(夜勤手当等)および一時金(賞与等)の1/6が含まれています。
4-2. 3つの分析ポイント
① 夜勤手当の影響(高齢者介護の総額が高い理由)
高齢者介護(特に特別養護老人ホームや介護老人保健施設など)は、24時間体制での身体介助が求められる施設が多く、夜勤の機会が頻繁に発生します。これにより、夜勤手当が給与総額を押し上げる要因となっています。
一方、障がい者介護では「就労支援」や「放課後等デイサービス」といった日中活動を主とするサービスも多く、比較的ワークライフバランスを重視した働き方が選択しやすい傾向があります。
② 資格の専門性評価(障がい者介護の逆転現象)
全体の平均給与額では高齢者介護がわずかに上回るものの、「介護福祉士」の資格保有者に限定すると、障がい者介護の平均給与額が高齢者介護を上回るという興味深いデータが示されています。
これは、障がい者分野において専門性の高い資格を持つ人材が相対的に希少であり、その専門性がより高く評価されている可能性を示唆しています。
③ 政策的な賃上げの動き
2024年度の補正予算において、高齢者介護分野における賃上げ(月額平均6,000円相当に加え、一時金支給)が注目を集めました。
しかし、障がい者介護分野でも同様の処遇改善が推進されており、最新の調査では障がい者介護の給与伸び額(+19,970円)が高齢者介護(+13,960円)を上回る結果となりました。
この事実は、「障がい者介護分野の待遇が急速に改善されている」ことを示しています。
4-3. サービス種別による給与の幅
高齢者介護と障がい者介護は提供されるサービスが多岐にわたるため、平均値だけでなく、サービス種別ごとの違いもみてみましょう。
高齢者介護サービス
| サービス種別 | 平均月給 (総額) | 特徴 |
| 介護老人福祉施設 (特養) | 361,860円 | 24時間体制、夜勤手当で高水準 |
| 特定施設入居者生活介護 | 361,000円 | 有料老人ホーム等、特養と同水準 |
| 介護老人保健施設 (老健) | 352,900円 | リハビリ重視、医療連携が強い |
| 訪問介護 | 349,740円 | 身体介助の割合が高く、近年上昇傾向 |
| 介護医療院 | 330,030円 | 医療と介護の連携、長期療養 |
| 小規模多機能型居宅介護 | 305,220円 | 訪問・通い・泊まりの複合サービス |
| 認知症対応型共同生活介護 (グループホーム) | 302,010円 | 認知症高齢者の共同生活支援 |
| 通所介護 (デイサービス) | 294,440円 | 日中のみの勤務が多く、総額は低め |
| 通所リハビリテーション | 319,310円 | 医療機関併設、リハビリ専門 |
障がい者介護サービス
| サービス種別 | 平均月給 (総額) | 特徴 |
| 施設入所支援 | 371,620円 | 障がい者分野で最高水準、夜勤あり |
| 重度訪問介護 | 347,540円 | 1対1の長時間支援、専門性が高い |
| 居宅介護 | 317,550円 | 訪問系サービス、生活支援が中心 |
| 共同生活援助 (グループホーム) | 291,050円 | 地域生活支援、夜勤の有無で変動 |
| 就労継続支援B型 | 289,130円 | 日中活動支援、身体介助は少なめ |
4-4. サービス種別給与幅から見える「ポイント」
① 「施設系」はどちらも高水準
高齢者の「特別養護老人ホーム(特養)」(36.1万円)と障がい者の「施設入所支援」(37.1万円)は、どちらも24時間体制のサービスであり、夜勤手当などが加算されるため、業界内でもトップクラスの給与水準です。
特に障がい者の施設入所支援は、高齢者施設を上回るケースも見られ、専門性の高さが評価されていることが伺えます。
「施設系」でも、グループホームにおいては、民間法人が運営していることが多く、入居者数も上限が少人数のため、給与水準はあまり高くない現状となっています。
② 「訪問系」の給与水準
高齢者介護の「訪問介護」(34.9万円)は、障がい者介護の「居宅介護」(31.7万円)を上回っています。これは、高齢者分野における訪問介護員の深刻な人手不足を背景に、処遇改善が積極的に進められていることが要因の一つと考えられます。
また、高齢者の訪問介護のほうが働き手も多く、障がい者に対する訪問介護を知らない方もいるのが現状です。
③ 「日中活動系」の安定性
高齢者介護の「通所介護(デイサービス)」(29.4万円)や障がい者介護の「就労継続支援B型」(28.9万円)といった日中活動を主とするサービスは、夜勤がない分、総額は他のサービスと比較して低くなる傾向があります。
しかし、規則正しい勤務時間で安定した収入を得られるという点で、ワークライフバランスを重視する方にとっては魅力的な選択肢となり得ます。
4-5. 給与に関する結論
👇結論
・給与の『額面』だけを比較するならば、高齢者介護がわずかに有利
・『資格の専門性に対する評価』、『待遇改善のスピード』、そして『夜勤の有無による働き方の選択肢の広さ』といった多角的な視点から見ると、障がい者介護は非常に魅力的なキャリアパス
となり得ます。
自身の専門性や働き方の希望に合わせて、最適な選択を検討することが重要です。
5.精神的負担の違い
ここまで解説してきたように、介助量や夜勤負担ももちろん精神的負担にも繋がります。
ただここでは、高齢者介護と障がい者介護特有の精神的負担に関して解説していきたいと思います。
5-1.高齢者施設
- 看とり対応
- 家族の要望
- 認知症による暴言や拒否
もちろん看とりや、何度も同じ言動を繰り返すことが多い認知症対応も精神的負担です。
それ以上に高齢者(認知症)介護において、障がい者介護と圧倒的な差があるのは「家族の要望」だと、これまで現場を見てきて強く感じています。
「ご本人がどういう生活を送りたいか」が前提にはありますが、認知症の場合ご本人から明確な要望を聞き取れることは少なく、「家族の要望にいかに応えていくか」になってしまうことが多くないですか?
5-2.障がい者施設
- 行動障害
- 支援方針の葛藤
- 長期的な関係性
障がい者の場合、高齢者介護以上に障がいの種別や程度が多岐にわたるため、ひとりひとりに対する個別支援に難しく感じることも多いでしょう。
とくに強度行動障害(強行)の方を支援している事業所では、強行の方に対する支援に大きな負担を感じる方が多いです。
また、ご本人の要望を言える方も多い反面、ご利用者の現状と要望がかけ離れていることも多く、その点をどう支援していけばいいのか悩む場面も多いのが特徴です。
6. 人間関係・チーム体制
人間関係やチーム体制の違いはあるのでしょうか?
6-1.高齢者事業所
看護師・リハ職・ケアマネなど、多職種連携が基本です。
看護師やリハ職が同じ事業所内に勤務していることも多いですし、障がい者の事業所と比較するとそもそもの事業所規模が大きいので、一緒に働く従業員数も多くなります。
つまり、多職種も含め様々な方とのコミュニケーションが必要になります。
一方で、問題になりやすい人間関係において、苦手な方が仮にいたとしても複数の方と接するため気が紛れることもあるというメリットも・・・。
また、事業所が大きくなればなるほど、現場リーダーの特色が各フロアの雰囲気に表れますし、小さな事業所になればなるほど管理者の特色が事業所の雰囲気に現れます。
6-2.障がい者施設
入所施設には看護師・リハ職の方もいますが、基本的には介護スタッフのみが勤務している事業所が多いです。
看護師やリハ職との連携においては、外部事業所との連携になります。
また、比較的小さな事業所が多いので、管理者の考え方や特色が事業所全体の雰囲気に繋がることが多いです。
👇結論
・大規模事業所では、各フロアの現場リーダーが職場の雰囲気を左右させる。
・小規模事業所では、事業所の管理者が職場の雰囲気を左右させる。
7. キャリアパスの違い
私の経験上、キャリアパスに関しては、キャリアアップのスピードに差があります。
7-1.高齢者分野
- リーダー
- 介護主任
- 相談員
- ケアマネージャー
- 管理者、施設長
- 運営マネージャー
上記のようなキャリアアップを目指すことができますが、体制が整っている事業所ほどキャリアアップまでの時間がかかることが多いです。
スピード出世も聞かないことはないですが、選択肢も多い分下積み期間が長いのが高齢者介護の特徴と言えます。
7-2.障がい分野
- 介護主任
- サービス管理責任者
- 管理者、施設長
- 運営マネージャー
上記のようなキャリアアップを目指すことができ、高齢者介護と比較してキャリアアップまでの期間が短い傾向にあります。
これが、賃金のパートで説明した「待遇改善のスピードが早い」ことに繋がっているのでしょう。
キャリアアップまでの期間が短いのはメリットと言えますが、裏を返せば体制が整ってないが故の場合もあるので、その点は慎重に見極めることをおススメします。
👇結論
・高齢者介護のほうが、組織体制が整っていることが多い反面、キャリアアップまでの時間がかかる。
・障がい者介護のほうが、キャリアアップまでのスピードが速い傾向にあるが、組織体制が未熟な可能性がある。
8.まとめ:高齢者介護と障がい者介護どっちに向いている?
ここまでいろいろと比較してきましたが、結局自分はどっちに向いているのか?
と考えられた方もいるのではないでしょうか。
8-1.高齢者施設に向いている人
- 身体介助に抵抗がなく、体力に自信がある方。
- 看取りや認知症の方への対応に理解と忍耐力がある方。
- 多職種連携の中で、多様な人とのコミュニケーションを円滑に行える方。
- 利用者のご家族の要望に寄り添い、調整する能力がある方。
- 組織体制が整った環境で、長期的な視点でキャリアを築きたい方。
8-2.障がい者施設に向いている人
- 利用者の生活全般の支援や行動支援に興味がある方。
- 突発的な行動への対応力や、個別支援の難しさに向き合える忍耐力がある方。
- 利用者の要望と現状のギャップを理解し、支援方針を柔軟に考えられる方。
- キャリアアップのスピードを重視する方。
- 比較的少人数のチームで、管理者の特色が色濃く出る環境で働くことに適応できる方。
さいごに
介護の分野で新しく働く、もしくは転職すると考えた時に「高齢者介護」を考える方が多いと思います。
障がい分野で、私が面接官をさせていただいた中でも「障がいの分野が初めてで不安です」なんて声も多く聞いてきました。
初めてであることの不安、わかります。ただ、「初めてだからこそ、何に対して不安なのか?」と聞くと具体的な不安はあまり出てこないことが多いです。
そんな方たちがイメージできる材料にこの文章がなればいいなと思いますし、すでに障がい者分野で働かれている方たちも改めて知る機会になればいいなと思います。
長文を最後までお読みいただきありがとうございましたm(__)m



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